あまりにも突然の突拍子もない命令に驚愕する家臣たち。
しばらくの沈黙の後には、当然反対の声が襲う。
「何を考えているのです陛下!」
「隣国を滅ぼせだなんて。あの国は代々我が国の属国として……」
「そんなことどうでもいい。滅ぼしなさい」
何を言ってもフランチェスカは聞かない。
その中で一人、レックスは笑った。
「かしこまりました」
たったひとりれクスだけがその命令を受け入れた。
その命令の意味は分かっている。
国を滅ぼすという事は王家を滅ぼすという事。
つまりはマリアを殺す事になる。
エルザの面影を殺す事になる。
それを分かっていて命令を受け入れた。
フランチェスカが初めて家臣に操られる事もなく自分の判断で下した命令だから。
「そう。じゃあ、任せるわ」
思えばいつも、フランチェスカはわがままを言っていた。
そのわがままを何度も叶えてきた。
女王になって、最初に自分の意思で下した命令がこれである事は悲しい。
だが、それでも叶えてやりたい。
すべては彼女のため。
彼女が望むなら、どんな事だろうとやって見せる。



