後日、彼女は王位を継承した。
家臣たちにいいように操られ政を行うお人形。
欲におぼれた大人たちの中にたった一人残ったお飾りの女王様。
王位を継ぐ前夜、フランチェスカはレックスを呼び出していた。
父親の事を聞かされてから一度も言葉を交わす事はなかった。
「失礼いたします」
ノックの後に部屋に入る。
部屋の奥でフランチェスカはこちらを見据えていた。
「……あなたに言いたい事がある」
抑揚のない口調。
彼女の表情は全く動かない。
「何でしょう」
「私に父親はいらない。あなたは父親じゃない。ただの執事よ」
冷たい声で言った。
その言葉に、レックスは声を丸め、そしてただ見つめていた。
実父も養父も拒絶した。
自分は元から父親がいない。それが彼女の下した決断だった。
「承知いたしました」
レックスはすぐに穏やかな笑みを浮かべて、頭を下げた。
それ以来、レックスは父の事を口に出さない。
レックスはただの執事。
フランチェスカに仕える使用人でしかない。
「戴冠祝いです」
フランチェスカが王位を継いだ時、レックスは宝石を贈った。
青く輝く宝石。その宝石を首にかけて満足げにフランチェスカは笑う。
そして女王は、家臣たちの操り人形として国の政を行った。