彼は真実を告げた。
赤子の交換。
実母の死。
そして彼の正体。
その話を彼女は簡単に信じようとはしなかった。
自分が本当の王族ではない。父だと思っていた人は、本当の父ではない。
本当の母はこの国の兵士たちの手によって殺された。
到底信じられるものではない。
それが事実であるなんて、認めたくないのだ。
それを認めてしまえば、今までの自分を否定するようなものに思えた。
今まで自分に対してよくしてくれた人々も恐ろしく思えた。
目の前の年若い男が父親だということも信じたくはなかった。
見目麗しい彼。いつも自分が何か言えばそれを実現させた。
そんな彼に憧れを抱いていたのだ。
それなのにこの告白だ。
「嘘よ」
「本当です」
「嘘よ! そんなの嘘ッ! 嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘! 嘘よぉおッ!」
狂ったように泣き叫び、否定するフランチェスカ。
ただその姿をレックスは見ていた。
彼女はただの馬鹿ではない。
いずれ自分で信じるか信じないかの結論を下すだろう。
今は気が立っているだけだ。
落ち着けば分かる。信じざるを得ない事を悟るだろう。
「……話は終わりです」
そう言い残し、レックスは部屋を出た。
取り乱しているフランチェスカの狂った声が戸の奥から聞こえてくる。
そのとき、レックスは自分の口元が笑みを作っている事に初めて気付いた。
自己嫌悪に舌打ちを漏らす。
レックスはこの時ほど自分は壊れていると自覚した事はなかった。
自分は、もう人間をやめている。



