レックスは実によく働いた。
そしてフランチェスカのわがままに嫌な顔一つ見せずに付き合う。
さらに、フランチェスカの世話にその仕事はとどまらず、城内の掃除、メイド達の管理、
兵士たちの武器のチェックにまで気を配り、とにかくよく働いていた。
その姿勢は城の人間に高く評価され、
長く仕えるうちにあのわがままなフランチェスカでさえも彼を評価するようになり、心を開くようになった。
「レックス、お腹すいた」
「では陛下や皆には内緒で何か用意いたしますね」
そのあとすぐに、簡単に作ったお菓子を持ってレックスは現れた。
お菓子を口に運び、満足げに笑うフランチェスカ。彼女が笑えば、レックスも笑う。
「フランチェスカ様、プレゼントです」
レックスは彼女に花束を渡す。
とても可愛らしい綺麗な青い花。
「町へ買い出しに行った際見かけたのです。お気に召すかと思いまして」
それを無言でうけとるフランチェスカ。
ぶすっとした顔でその花束を見つめる。
「お気に召しませんでしたか?」
伺うような眼でレックスは彼女を見つめる。
「早く花瓶にでも飾りなさい。飾る場所がないんだったら私の部屋でいいわ」
そういって花束を突っぱねた。
立ち去っていくフランチェスカ。
クスリとレックスは笑みをこぼす。
立ち去る時に見えた彼女の口元は緩んでいた。
喜んでくれたようだ。
いつしかフランチェスカは父の代わりにレックスに甘えるようになる。
父の愛情を失ってから、初めて自分のわがままに付き合ってくれる人に出会えたのだ。



