そしてフランチェスカが5歳の時に事件が起きた。

王妃が命を落としたのだ。
王女お披露目の翌日の事だった。



暗殺。


王妃の喉に剣がつきたてられていた。
壁には血で文字が書かれている。


『王族に告げる。
 罪を自覚せよ』


王妃に使える侍女たちの顔が青ざめる。
そして大臣も、少しの不安がよぎっていた。


父親の復讐。

フランチェスカの実の父親が報復に現れたのであろうか。
もう王に知られないようにすることはできなくなっていた。


侍女たちは正直にその罪を告白する。
王妃の為に赤子の交換を行った事。
そのために赤子の母である城の小間使いを犠牲にした事。
そしてその小間使いの夫の消息がつかめていない事。


王は激怒した。

なぜそんなことをしたのか。なぜ、そんな罪を犯したのか。


「すぐにフランチェスカを父親の元へ返すのだ」

「お待ちください陛下。……姫は我が国の世継ぎとなる方ですよ」

「何を言っている。あの娘は本来……」

だが、王は言葉を止めた。
家臣たちの目が恐ろしかった。

「……なんでもない。すまない」

「では、さっそく父親を探しましょう」

大臣は兵士に命令を下した。

父親の捜索。
それは娘を返すためではない。


殺すためだった。