奪うのは簡単だった。
まず侍女たちが彼女の家を訪れて油断させる。
そして隙を見て強盗に扮した兵士たちが押し入り、赤ん坊を奪う。
そのためにエルザを殺した。娘を返せと騒がないように。
たまたまその場に夫がいないために、彼は助かった。
だが、いずれ戻ってくる夫を殺す。
偽りの王女を作るために。
彼女の秘密が国民に知られないように。
こうして、王族に一人の王女が誕生す。
王妃は彼女を自分の娘と信じて疑わず、娘を愛した。
王女はフランチェスカと名付けられた。
新たに生まれた王女様。
城の人間たちは大いに喜んでいた。
そして、夫が仕事を終えて帰ってきた。
目の前に広がるのは荒された自宅。商品にならず自宅に置いてあった屑ダイアもすっかり盗まれていた。そして何よりは
「エルザッ!!」
自宅の奥で悪臭を放つ妻の姿。
無惨な姿で彼女は横たわっていた。彼女に贈った宝石も奪われている。
「エルザ! エルザッ! 目を開けろ! 俺を見ろ! エルザ!」
彼の声は、もう妻には届かない。
その後の彼は姿を消した。
誰も彼の行方を知らない。