いつも通り常連さんと話をしながら、マスターが骨董店でかき集めた自称最高級品の食器を磨く。


手を動かしながら会話をしていれば、自然とあの日の出来事を脳から追い払うことが出来たが、それはお客さんがいる間だけ。


常連さんが店から出ると、マスターも買い出しに出かけてしまい、結局また一人ぼっちになってしまった。


癒し空間の塊みたいなこの店も、今となっては千秋との思い出が沁みついてしまって、また昨晩の光景が脳内でフラッシュバックした。


浮気現場の目撃とか、痛恨の一撃ってレベルじゃねーぞ。


まだ浮気と決まったわけじゃないし、そもそもあのイケメン千秋が浮気なんてことをするわけがないし、どう見てもあの状況は千秋が謎の男に組み敷かれて襲われている構図だったし、千秋の受け答えもやましい感じは一切感じられなかったし。


だからあれは、浮気なんかじゃない。


こっちが動揺するほど千秋は冷静だったから、きっと強姦まがいな感じでもないはずだ。


友人の男が酔っぱらって、ふざけて押し倒しただけ。その現場にたまたま俺が居合わせただけ。


これなら全て合点がいくし、納得できる。