「言っとくけど、付き合わねえから」

「えっ?!」



驚いて雄悟先生の顔を凝視する。

さっきまで恥ずかしくて直視できなかったのが嘘みたいだ。



「南にとって今が一番大切な時期だろ。付き合ってる時間なんてねえよ。桜さんにもそう言ったって言っただろ」



受験生なんだから、そう言って雄悟先生は遠くを見つめる。



確かに……。お母さんにそう言ってたの、忘れてた……。

私とは違う、広い視野で雄悟先生は私との関係を見てるんだ……。

先生は大人だな……それに比べて私は……。



視線を足下に落とした。握っていた先生の手を離す。



私は先生の言うとおり、本当に子どもだ。



「合格したら……」

「え?」



口を開いた雄悟先生に、顔を上げて聞き返す。



「うちの高校に合格したら、考える」

「ほ、ほんとに?!」



雄悟先生が頷く。

嬉しくて、破顔する。

高校合格したら、付き合えるんだ。

彼女って、どんな感じだろう……。

考えるだけで、ドキドキする。

思ってもなかったご褒美が用意された気分。

高校受験に向けて、一層勉強頑張らなくちゃ!