「だから、キスのことは忘れてくれ」
「え……?」
「勝手にキスして、悪かった。南の近くに男がいるのがすげえ嫌だった。取られたくないと思ったら、キスしてた」
本当ごめん。
そう言って雄悟先生は繋いでいた手を離した。
「……やだ」
「は?」
「やだ、忘れたくない」
離された手を、両手で追いかけて捕まえる。
雄悟先生の手をギュッと握った。
「忘れたくない……私も、好きだから」
男の人のことを、こんな風に思うのは初めてだから、言うのも初めて。
「何言って……」
雄悟先生は突然のことに驚いているみたいだった。
恥ずかしさで雄悟先生の顔を見れなくて、握った手を見つめる。
その手も震えていた。
「……ありがとう」
そう言った雄悟先生の顔をちらちらと見る。
も、もしかして付き合うとかになるのかな……?
そしたら私、雄悟先生のか、彼女……?
期待と不安で胸が張り裂けそうな私を、先生はバッサリと切り捨てた。


