「せ、先生、くすぐったい……っ」

「南、心臓の音すげえ」

「そんなこと、ない……」



うそ。本当はわかってる。

私、今きっと心臓が馬鹿になってる。



「雄悟先生、離してっ」

「やだ」



雄悟先生は子どものようにそう言って、腕の力を強める。

ほんとに、恥ずかしいし、身体熱いし……心臓もう、止まりそう……。



「おねが……はなし、て」



――ちゅっ



「え?」



かすかなリップ音と、肌に感じる柔らかい感触。

すぐに雄悟先生の唇が肌に触れていることに気づいた。

唇の感触は、鎖骨を撫でるように触れる。



「やっ、な、な……」

「ははっ、かわいい」

「なに、なにい、って」



テンパって、自分でも何を言っているのかわからない。



「南、めっちゃ良い匂いすんな……」

「え、ちょっ?!」

「もう少し、このまま……」



そう言って雄悟先生は目を閉じる。



「え、雄悟先生?!」



呼びかけても返事はなく、すぅー、と寝息が聞こえてくる。



「う、うそ……っ」



寝ちゃったの……? この状況で……?!

どうしてこんなことに……っ?



自分の心音だけが、やけに大きく聞こえた。