「昔、お父さんをすごく怒らせたことがあって……」
まだ小学生の頃だったと思う。
原因は覚えていないけど、多分、門限に帰ってこなかったとか、そんなこと。
「お仕置きだって、真っ暗な物置に閉じ込められたの。その日は今日みたいにすごい雷が鳴ってる日で……」
冷たくせまい、真っ暗な空間の中、鳴り止まない雷。
恐怖心は頂点に達し、いっぱいいっぱい「お父さんごめんなさい、ごめんなさい」と泣き叫んだけど、許してはもらえなかった。
「怖くて怖くて……それからずっとトラウマで」
雷の音を聞くだけで身体が震えて動かなくなり、涙が止まらなくなる。
周りに知っている人がいれば多少マシになるけど、一人でいるとそれは避けられない。
愛夏も私が雷が苦手だと知っていて心配してくれていたんだ。
「それ、虐待じゃ……」
「わ、かんない……」
雄悟先生は悩むように唸ってから、決意したように私と目を合わせてこう言った。
「今日、泊まるわ」
ザァーと雨の音が窓の外から存在を主張していた。