『娘の家庭教師を引き受けてくれないか』



桜さんは俺にそんな話を持ちかけた。

桜さんの娘さんは中学3年生で、俺が通う明英高校を志望しているらしい。

もちろんそれなりのお金は払う、そう言われれば、バイト先のなくなった俺にとっては断る選択肢はない。

ただ、問題があるとすれば……桜さんの娘さんである南ちゃんが、男嫌いであることだった。



桜さんはとても明るく活発な人だった。

当然、南ちゃんも同じタイプである可能性が高い。

そして、それに男嫌いが加わるとなると……。

あれ、ちょっと……大丈夫か?



桜さんは店長などがおかしなことを言ったりすると、ハッキリ言い返す気の強い人だった。

そんな桜さんの娘の南ちゃんもなら、嫌いである男の俺に平手打ちでもしてくるんじゃないか……。

そこまで覚悟していた。

でも、実際の南は全然違った。

正直、一目惚れだった。