いつ、家に帰ってきたのか良く思い出せない。
自分の部屋のベッドに座って、購入したチョコレートの箱を開ける。
ぽたぽたと零れる涙がチョコレートを濡らしてしまう。
涙に濡れたチョコレートを口に入れた。
「甘い……けどしょっぱい……」
甘いのにしょっぱい、チョコレート。
辛くて苦しいのに……それでも雄悟先生のことが好きな、私みたい。
女の人と腕を組んで歩いてる姿を見た後なのに……。
雄悟先生とこれを食べたかったなんて、思ってる。
馬鹿みたい……。
――ピンポーン
インターホンが鳴る。
雄悟先生かな……。
遠くではーい、と玄関を開けるお母さんの声がする。
しばらくして、ドアがノックされてから開けられる。
「南、遅くなって悪か、った……南?」
「返事聞いてから入って下さい……」
「わ、悪い……」
つい、敬語になってしまった。
私、こういうときに敬語になるタイプだったみたい。


