愛夏には言ってないけど、雄悟先生は私の気持ち知ってるから……。
義理チョコだって言っても、そう思ってもらえないよね……きっと。
「考えてみるよ」
無理矢理笑顔を作る。
愛夏はそれ以上何も言わなかったけど、納得はいってなさそうだった。
学校からの帰り、駅はバレンタインデー特集であちらこちらでチョコレートが並んでいる。
勉強……しなきゃ、いけないよね。
あと数日で本番だもん。
バレンタインデーとか……そんな場合じゃないし。
でも、自分用に一つ買うのは、いいかな。
勉強が終わってからご褒美として食べるのは、いいかな。
一つ、チョコレートが入った箱を手に取る。
一つ一つ箱の中に綺麗に並んだ美しく細工されたチョコレートは、さながら宝石みたいだ。
最近良いことないし……このくらい、良いよね。
授業終わりに先生と食べられたら……いいな。
ダメだったら、一人で食べよう。
そう思って、一口大のチョコレートがいくつか入った箱を購入した。