「受験では必需品だろ。持ってないって言ってたから」
「ありがとう……嬉しい。大切にするね」
雄悟先生はああ、と頷く。
「サイズ、大丈夫だと思うけど。つけてみ?」
「うん」
箱から時計を取り出して左腕につけてみる。
腕時計は少し緩いくらいでぴったりだ。
「良さそうだな。よかった」
「うん!ありがとう」
雄悟先生に笑顔でお礼をもう一度言う。
嬉しい。先生が私のためにこの時計を選んでくれたことが。
どんな顔して選んでくれたんだろう。
それを想像するだけで、幸せな気持ちになれた。
すごく幸せな1日だった。
だから、こんなことになるなんて想像もしていなかった。
ずっとこうやって幸せに過ごしていけると思ってた。
苦しいことなんて何も無いって、思ってた。