(神よ・・・いるなら手を貸してくれ)
あなたの娘を守ってみせるから。
祈ったつもりはなかった。
しかし、思いは天に届いたらしい。
空が光った。
「うわあああああっ!?」
「退けーーー!」
耳が壊れたかと思った。
それほどまでに激しい落雷だった。
敵軍の本陣を中心に落ちた雷は、味方の軍にはかすりもしなかった。
「陛下! ご無事ですか!」
「ああ・・・」
「不思議なこともあるものです・・・どうやらあちらの大将は黒焦げらしいですな」
「小隊長。殿ご苦労だった」
不思議なこと、だと?
気づけば、腕の中の娘は気絶していた。
敵軍は散り散りに敗走し、この戦いの勝利を喜ぶ声が上がった。
もちろん、こちらの軍から。
「鳴神・・・・約束は、必ず」
娘を起こさぬよう、そっと天幕へ戻った。