裸足のシンデレラ

「あ…ご…ごめっ…そんなかかるとは…。」


軽く水の表面を叩いただけなのに、思いの外瞬に水がかかってしまった。
…明らかにご機嫌ナナメ。


「…お前なぁ…加減ってものを知れよ。」


前髪からポタポタと水が滴る。
その前髪をかきあげながらあたしをじっと見つめる瞬。
…ちょこっとだけ心臓がうるさくなる。


ばっしゃあ…!!

…ポタポタポタ…
滴るのはあたしの髪から。


「ちょっ…瞬!!あんたねぇ…!!」

「お返し。やったらやり返す。これジョーシキだろ?」

「どこの国の常識よ!?」

「俺の国。」

「バカー!!もうこれどうすんのよ!?制服なんだけど!?」

「予備があんだろ?」

「っていうかあたし、ここまでやってないじゃん!!」

「やられたらやり返す。ただし倍以上で。これ鉄則。」

「はぁー!?もうっ!!信じらんないっ!!」


あたしはシャツの裾を絞る。
…こんな風に濡れるのなんて、ホント何年振りだろ…。


「やっぱさー…真姫。」

「なによ?」

「ガラスの靴なんてさー…なくてよくね?」