「先生は恋をした事はある?自分が自分でなくなってしまいそうな程の恋……」
「ええ、ございますよ。若かりし頃に。忘れる事も出来ない程の……」
「どんな恋でした?」
「私の家に仕えていた侍女でした。幼なじみで特別美人という事はございませんでしたが明るく優しい彼女に私の心は惹かれ、いつしか愛し合うようになっていたのです。ですが彼女と結ばれる事は許されなかった。こんなに互いに愛し合っているのに身分が違うという事だけで私達は引き離されそうになってしまいました。そこで私達は全てを捨てて二人で逃げて新しい生活を始めたのです。生活は苦しかったけれど幸せでした。あの頃はただ彼女が側にいてくれるだけで良かった。ですが幸せな日々は長くは続きませんでした」
ランスはあの頃を思い出すように瞳を閉じた。
「私の両親に探し出され今度こそ永久に引き離されてしまいました。どうしても諦め切れなかった私は両親に頼み、条件を与えられました」
「条件?」
「はい」

