「ったくあの人はまたそうやってッ!!」

苛立ちをぶつけるように、
芹沢様のお部屋を睨み付ける土方様。

壬生浪士組の中でも、
芹沢様に対して、良い思いをされている方は、極僅かだ。

民を脅してお金を巻き上げたり、
暴行の数々を繰り広げたりする為に、
民の間では、壬生浪士組に対して、
良く思う者は少なく、人斬り集団と恐れられている。

その様な印象を与えたのは、他でもない。芹沢局長だ。
芹沢局長の行動には、
副長の土方様も頭を悩ませている様だ。
芹沢局長のおかげで、壬生浪士組の評判は悪い為に、
隊士が入ることも少ない。
おまけに隊内でも、
芹沢局長率いる芹沢派と、近藤局長率いる近藤派に別れて
非常に大変なのだとか。

私もそれには同感だ。
芹沢派の方々は私を道具だとしか考えていないから、
好きになれない。
私にたいへん良くしてくださる、近藤派の方々は
気に入っている。

「しかしトシ。芹沢さんはとても頭が良い。あまり悪く言うんじゃない。」

近藤様は芹沢局長と同等なのに、
芹沢局長の方が素晴らしいとお考えの為に、
強く言えないのだとか。

「あんたは甘いんだ近藤さん。」

溜め息と共に漏らした土方様のお言葉に、私も賛同し、思わず頷いてしまった。

「たしかに、聡明な方だと思いますが、
私は芹沢局長を好きになれません。」

土方様は私の言葉に頷くとまた話し出した。

「芹沢さんの行動で、隊内は荒れてるし、
世間には人斬り集団って呼ばれる。
民を守る壬生浪士組が民を脅すのは、良くねぇだろ。」

近藤様は土方様の言葉に苦笑いをこぼし、溜め息を付いた。

「俺はあんたが真の局長だと信じている。」

土方は近藤の瞳を見つめ返して、強く言った。