「珠姫ちゃん?」

沖田様が御心配なさっている。でも食べたくない。
首を振って拒絶すれば良いだけなのに、沖田様の雰囲気がそれを許さない。

「ほら、僕が食べさせてあげるから。」

「いえ…自分で食べれます。」

「そう?」

沖田様からお箸を受け取り、少しづつ頂く。

「ッ!?」

途中何度も吐き出しそうになった。それでも食べなければならない。
無理矢理口を動かし、喉を動かす。

「よしよし。」

沖田様は私の背中を擦ってくれた。
それでも全てを食べるには至らず、半分位でもう気力も沸かない。

「珠姫ちゃん?」

「総司、あまり無茶をさせるな。」

襖が開き、そこには歳三様が立っていた。

「あ、土方さん。」

沖田様には目もくれず、歳三様は沖田様の隣に膝を立てた。

「珠姫はどれくらい食べた。」

「まぁ半分は食べましたよ。」

「………今の珠姫なら充分だろ。少し横になれ。」

私の体を御布団の上に寝かせてくれた。

「歳…三、様」

「頑張ったな。少し横になれ。背中を擦ってやる。」

私の体を横にすると、優しく背中を擦ってくれる。
歳三様の手に安心を覚えた。

「じゃ残りは此処に置いておきます。」

机に残り物を置くと、沖田様は部屋を出ていかれた。

「世話になった。総司。」

「…………いいえ。お大事に。」

そうして襖の閉まる音がした。私の意識はここで途切れてしまった。
だから、ずっと背中を擦ってくれている歳三様の声を聞いていなかった。

「………悪い。珠姫。これも新選組の為だ。」

そう言って滅多に涙を見せない歳三様が
泣いていた事を。
私は知らない。


今でも私は分からない。
何故彼等が歳三様と私の子供を殺したのか。
いや、殺されなければならなかったのか。

この時ずっと塞ぎ込んでいた私には、
そんなことを思う時間もなかった。
私が子供を殺してしまったのだと思っていたから。

今でも彼等は何を思っていたのか分からない。
でも彼等の気持ちなど最早関係ない。
私の中にある復讐という思いを成し遂げたいだけだ。