冷えていた体が温まって、大樹の香りに包まれる。 大樹を忘れようとしていたことは胸の中にしまって目を閉じた。 ウソみたいだけど、大樹の香りが本当だと感じさせる。 「あ!」 わたしは部活帰りだったと思い出して大樹の胸を押す。 「どうした?」 ひんやりとした風がわたしと大樹の間に流れて、大樹が不思議そうに見る。 「臭い……」 「は?」 「いや、部活帰りだから……」 「何だ、そんなことか……気になんないけど?」 大樹が笑う。