さっきの話題にしろ、今の話題にしろ、女と言うのはしたたかである。
“あなた”と結婚したいのか、“結婚したいから”あなたなのか。
どっかの誰かも歌ってたな。
『好きな男の腕の中でも、違う男の夢を見る』かぁ。
……考えながら飲んでいたら、どうやらピッチがあがっていたらしい。
既に空になりつつあるグラスを傾け、メニューを見る。
大衆居酒屋にしては焼酎の種類が豊富だ。
次は何を飲むか……よし、決めた。

「すみません、赤兎羽ロックで」
「かしこまりました」

――…スコンッ!
店員さんを見送った直後、良い音がして、頭に痛みを覚えた。

「痛いっ」
「純那!あんたね、女捨ててない?」

頭をさすりながら振り向くと、さっきまで別の話で盛り上がっていたハズの女の子たちが私を痛い目で見てくる。
哀れみの目で見られるほど、私は何か粗相をしたか?

「菜都、真理奈の話は終わったの?」
「とっくに!」
「そう。切り替わるの早いね。……で、なんで私は女を捨ててることになるの?」

私は今のところ別に女を捨てたつもりは更々ないんだけど?

「男も集まるクラス会に!話にも加わらず!!飲んでるモノが!!!芋・焼・酎!!!!」

ひとつひとつ指を指して菜都は熱弁する。
ちょうど来たところに指を指された店員さんは目を丸くしながらも、その責務を全うしている。
嫌いじゃないよ、その姿勢。

「失礼いたしますぅっ!……赤兎羽のお客様」
「あ、はい。私です」

ひょい、と店員さんから受けとると、グラスがカラン、と氷が音をたてた。

「……しかもロックね。それにしても、菜都サン?人を指差すもんじゃないよ」
「ん、まぁ、そうね。……でもね!あんたのそれ、女捨ててるって言わずになんて言うのよ?」