胸が熱くなる。
言葉にするのは、とても簡単で、でも、とても難しい。
あぁ、これは過去の私の恋心。
幼くて、閉じ込めた、苦い思い出。
胸を熱くするのは、ようやく決着がついたことで、改めて見えたモノだ。

「オレも後悔してない。あの時、伝えたことも、振られたことも」

私は、フフフッと笑い
本多は、ニヤッと笑った。
わだかまりはもう、ない。

「……来月、瑠奈と結婚するんだ」

真っ直ぐ私を見つめてそう言う本多は、真剣な表情。
あぁ、その顔が、とても好きだった。
ずるくても不器用で、真っ直ぐな、その顔が。

「そっか、瑠奈ちゃんと。まだ付き合ってたんだ?」

きちんとそれを聞けるくらい、きちんとそれを言えるくらい、私たちは大人になった。
それぞれの時間を過ごした。

「いっぱい傷付けた。これからも、たぶん」

これは、本多の懺悔なのかもしれない。
瑠奈ちゃん本人には、言えない。
友達にも言えない。
『私』にだからこそ言える、懺悔なのかもしれない。

「傷つけて、それでも一緒にいてくれて。だけど……、オレを一番傷つけられるのは、瑠奈だったから」

真面目な瞳の横に、少し苦労をにじませる。
悩ましいことも、傷つくことも、傷つけることも、人と関わる以上は避けて通れないものだ。
けれどその分大切なものに出会える。
気づいたときに、その先を決めるのは、自分自身。
幼い私は、本多に恋をして、傷ついて、だからこそ、別の大切な人に巡り会えた。
あの頃の私が選んだ道が、今の私だ。
それは本多も同じこと。
高校時代、とても好きだった、あなたへ。
目一杯の『優しさ』と、ありったけの『幸せになって』の心を込めて……。

「おめでとう」

そう言って握手をした。