彼女はそのまま私の横に腰かけてきたので、軽く話す。

「梓。久しぶり。小泉くんは放っておいていいの?」
「いいのいいの。大体いつも一緒なんだもん。それよりみんなと話したい」
「ひどい奥さんだねぇ」
「いいんだよ、ちゃんと愛し合ってますから」
「そりゃごちそうさま。……さくらは元気?」
「元気だよー。今日は仕事忙しいみたいで残念がってた」
「本当に相変わらずあんた達は仲が良いよねぇ」
「それは誉め言葉?ありがと」

他愛もない会話。
久々に会う友人と、ありきたりな話題を繰り返す。
久しぶり、最近どう?それだけで、会話の糸口は上出来なのだ。
そこから、話しはあちらに飛び、こちらに飛び……いつの間にか焼酎は、残り半分を切っていた。

「じゃあ私、あっちに行くね!また会おー!」

キリが良いところで、梓もちょうど、どこからか呼ばれて去っていく。
元気で明るく朗らかだったあの子も、その良さはそのままに良い女になったものだ、としみじみ思って苦笑した。

「同い年だって」

思わず呟いて、グラスを傾ける。
私だって、同様に年を取ってると言うのに。


……もう、帰ろう。
私は今、大切にするべき人が居る。
掘り起こさなければ、私の感情は穏やかだ。
ぐっと、残りの焼酎を一息で飲み干す。
氷が溶けたそれは、もう薄くなっていた。