懐かしさに囚われて、時間が止まっていたように感じるけれど、どうやらそれも数秒のことだったらしい。
気がつけば本多は既に私たちのグループのいる座敷までやって来て、靴を脱いでいた。
見るとはなしに、それを追う。
まるで、あの頃みたいに。
クスッと笑いが溢れたところで、本多もくるりと方向転換して、こちらを見る。
お互いがお互いを認識するかしないかのタイミングで、待ってましたとばかりに本多に声がかかる。
流石に、人気者だ。

「とーる!遅いっ!」
「こっちー!!」

一瞬目が合った気がしたけれど、体を反転させて、本多は声のする方へと向かって行った。

「お待たせしましたー!」

元気な店員さんが持ってきたロックグラスを受け取り、そのまま、一口。
まだ氷の溶けていない殆ど原液の焼酎は、カッと喉元を熱くする。
そうして、ゆっくり息を吐いて考える。

……これを全部飲み干したら、帰ろう。



さっきの菜都の言葉が蘇る。

『なんで今日来ようと思ったのよ?』

なんでだろう。
私は今、幸せだ。
そこに偽りはない。
けれどこの、同窓会のお知らせを聞いて、どうしようもなく心は騒いだ。
純粋に懐かしく、楽しみで、行きたいと思った。
そこに、本多が居なければ。
前の私だったら、……きっと“居る”かもしれないから、逃げてたんだろう。
まさに、今の自分みたいに。
それでも今日、来れたのは……


「純那、楽しんでる?」

思考を遮るように声がして、振り向けばそこにはカクテルを手にした友達がいた。