Nostalgicな祭りのあとで

「陸?」
後ろ手にそっとドアを閉め、大樹が陸の姿を探した。

陸は少し離れた掲示板の前にいた。
貼り紙をペリペリと剥がし、クシャリと潰す。
この間から、至る所に貼られたチラシ。

「ゴミ処分場が貢献した町づくり」と大きく書かれたそれは、明日の祭りのイベントのひとつだった。
町長の息子が来て講義するらしい。

「クラスの中にもいたよな・・父さんが隣町まで働きに行ってるって奴。」
「仕方ないよ。この町には大きな仕事はないから。農業と自営業以外の人は、たいてい隣で働いてるよ。・・あの会社のおかげで、生活してる家多いし。」

だよな・・と陸は窓の外から仰向けに顔を突き出した。
空はうっすらと雲がかかっているものの、雨は上がっていた。

「父さんに何言ったって無駄だしさ。」

七菜がペシンとおでこをはたく。
いつの間にやら抜け出したことに、気づかれていたようだ。

「馬鹿・・・何も知らないのね。」