Nostalgicな祭りのあとで

「あの山登ったんね?」
スイカを抱えたキヌが、目尻にシワを寄せた。

「婆ちゃんは?」

キヌは二人にスイカを手渡すと、ドッコイショと腰をかけ指差した。

隣の屋根の間から、あの山が見えることを、陸は初めて知った。

「あそこはやまじいのジイ様の山でな・・・よぉ遊んだよ。つくし、山菜、魚に、茸採ったりして。四季が綺麗な山なんよ。」

昔を思い出したのか、キヌはほんのり頬を上気させた。

「ジイ様の死後、隣町と道繋げるゆうて盗られてしもてな。それでも、やまじいは毎日通いよったなぁ。」

ふふ、と笑って、
「やまじいの思い出の桜もあるんよ。」
と遠い目を空に向けた。