「どうですかね、ソフィアさん。最上級生の目から見て今年の1年生は」

校舎屋上。

転落防止のフェンスに凭れ掛かりながら、ロシア人留学生の女子生徒が言う。

肩口まで伸ばした蒼い髪が風に揺れる。

透き通るような白い肌、宝石のような瞳が春の陽光に眩しく輝く。

その女子生徒…高等部2年のアリスカ・テフレチェンコの問いかけに。

「どうもこうも…まだ遠目に見ただけでは何とも言えませんわ」

肩に乗った黒猫の喉をくすぐりながら、金髪ショートヘアの女子生徒…3年のソフィア・ローズは青い目を細めた。

肩に乗っているのはシファ・クロナ。

渾名は『シー』。

昨年まで天神学園の高等部3年に在籍していた、人間の姿になれる稀有な能力の持ち主だ。

年齢的には既に卒業生なのだが、なにぶん猫だ。

学園での生活が心地いいらしく、卒業後も居ついてしまっている。