今まで誰にも話さなかった胸のうちを、…話してもいいのか?
杉野:「あ!聞かれるの嫌でしたら私どっか行きますよ?」
「いや、…別に俺は…。」
杉野:「…じゃあ…聞いてもいいですか?」
そう正直な杉野に思わずフッと笑って、
「ああ。」
と答える。
すると杉野は俺の隣にストンッと三角座りをして、顎を膝に乗せ目をつぶった。
暖かいな。何故だろうか。
サラサラと涼しい風が、杉野の髪を撫でていく。
涙が溢れそうな気持ちになった。
少し触れる肩から、杉野の温もりを感じながら、俺は海を見つめた。
「……俺には昔、兄がいたんだ。」
夕日が水平線のちょうど半分に差し掛かった時、俺は…話し出した。
杉野:「…はい。」
「…とても小さい頃の話で…父はブランド会社の社長を勤め、兄は将来有望な後継ぎとして教育熱心な母に育てられていた。」
俺は、…自由だった。夜中、叱られる兄のそばで、寝ていた。
きっと憎んでいただろう。
"何で俺だけこんなめに…。"そう泣きながら、俺の隣で鼻を啜っていた。
「…ある日、兄は家出をした。」


