その態度から、柚葉は何も話したくないんだと察する。


俺はグラスに淹れたアイスコーヒーを無言でテーブルに置いてから、バスルームに行った。


心のどこかで、彼女がそれを飲んでくれない事をわかっていたのかもしれない。


だから、風呂から上がってリビングに戻った時、全く減っていないアイスコーヒーを前に、妙に納得している自分がいた。


氷が溶けたブラックコーヒーの上澄(ウワズ)みは透明で、グラス中ではコーヒーが見事なグラデーションを描いている。


それを見て、柚葉はグラスに触れてすらいないんだと気付いた。