恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「海斗ぬこと、好きか?」


一瞬、心臓が止まったのかと思った。


「へっ!」


昨日今日、島へ越して来たばかりなのに。


いきなりそんな事聞かれても、困る。


あたしは失恋したての人間だ。


「何! いきなり」


おばあが目を細める。


あたしはたまらず咽せてしまった。


げほげほ咳き込むあたしに、


「変な意味でねえ。なーに慌ててるばぁ」


とおばあが鋭い目つきをした。


「海斗と居て楽しいか?」


ああ、そういうことか。


あたし、なに挙動不審になってるんだろう。


ゲホ、とひとつ咳払いをして、あたしは答えた。


「好きか嫌いかなんて、それは良く分かんないけど」


確かに、海斗と居ると気が楽なのはその通りで。


「楽しいよ」


そんなら、とおばあは続けた。


「誰ぬ事も信じなくていいから。あぬひゃあ(あいつ)だけは信じてやれえ」


おばあの言葉は本当に難しい。


「あぬひゃあ?」


「フン……海斗ぬことよ」


海斗を信じろってこと?


茫然と立ち尽くしていると近づいて来て、おばあはあたしの手を掴んだ。


傷だらけの手のひらをじっと見つめて、おばあは言った。


「陽妃と海斗は、よーく似ているよー」


あたしと、海斗が?


「海斗おは、陽妃いと、同じ傷を持っているさー」


同じ、傷?


海斗が?