恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

どうやら、集落の同級生の照屋武司(てるや たけし)くんという男の子が、流れ星を見たらしい。


夏休み初日の、夜に。


「武司ばかりずるいよね」


その話を聞いた海斗たちは我も我もと、夜になると空き地へ繰り出し、流れ星を探しているらしい。


「見てみたいさ。星が流れるところをさ。けど、まだ一度も見たことないのさ」


あたしは笑いそうになった。


そんなに必死になって見てみたいだなんて。


何か願い事でもあるのかな。


そう思って聞いてみると、意外な反応が返ってきた。


「何言ってるか。違うさ」


と海斗はキョトンとした。


「流れ星は、誰かの願い事が叶うと流れるんだぜ。陽妃は知らないの?」


こっちまでキョトンだ。


「えっ、そうなの?」


「そうさ。だから、星に願い事しても叶わないんだぜ」


そう言って、海斗はすっと立ち上がった。


「おばあ! くわっちーさびたん(ごちそうさま)!」


「フン。そんな簡単に見れるもんか。ばかか」


おばあはむすっとして「早く帰れー」とそっけなく言った。


「何さ。夏休みの間に絶対見つけてやるさ」


見てなっさー、と海斗は居間を飛び出して行った。


なんだかおかしかった。


だから、くすくす笑った。


飛び出して行った海斗は幼い子供がはしゃいでいるみたいで、おかしかった。


食器を片付けるのを手伝い、


「おばあ。あたしも帰るね。アバサー汁、ごちそうさま」


おいしかた、と帰ろうとしたあたしを、


「陽妃」


とおばあが呼び止めた。


「何?」