恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

あ、と思った。


だから、おばあはユタになったのかもしれない。


戦争で家族を失って、壮絶な悲しみを経験したから。


だから、おばあには神様の声が聞こえたのかもしれない。


「分かったさー。いー」


電話で話すおばあの背中が、とてもとても小さく見えた。


おばあの悲しみに比べたら、あたしの失恋なんて小さくて笑い話にもならないよね……。


それなのに、あんなふうに取り乱したあたしは……。


チン!


おばあが受話器を置いて、海斗を睨む。


「海斗。今すぐ家に帰れえ。母ちゃんから電話がきたよ」


お椀を持った海斗が、しかめっ面をした。


「ええー。何の用だったのよ?」


のしのし、おばあが戻って来る。


「へいたとしょうたが来てるって言っていたさ」


「……ああーいっ!」


何かを思い出したのか、


「うっかりしていたさあっ!」


と海斗が慌てた様子で大きな声を上げた。


「どうしたの?」


聞くと、海斗はアバサー汁を一気に飲み干した。


「ふしぬやーうちー、探しに行く約束していたのすっかり忘れてたが」


「ふしぬ……?」


首を傾げると、海斗が窓の外を指差した。


「流れ星のことさ」


「流れ星、探しに行くの?」


うん、と頷いた海斗は目をキラキラ輝かせる。


どこからどう見ても好奇心旺盛な少年だ。


「タケシがよ、見たらしいのよね。流れ星をさあ」