恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「おばあ、本当は嬉しいのにさ。照れてるのさ」


「本当に? 信じられない」


だって、人並み外れまくりの無愛想なんだもの。


他に考えられることと言えば、ひとつしかない。


きっと、ものすごく怒ってるんだ。


あたしが、ガジュマルの木をボロボロにしてしまったから。


あたしは恐る恐る声をかけた。


「おばあ」


「何か」


「ごめんなさい……ガジュマルの木のこと」


「フン」


ごくごくとアバサー汁を飲んで、おばあは箸を置いた。


「やってしまったことは仕方ないさ。終わったこといつまでもくよくよするなあ」


おばあの言う通りなのかもしれないけど。


「でも、どうしよう。本当に災いがあったら」


海斗も箸を置いた。


「おばあは分かんないの? どんな災いなのか。ユタなんでしょ?」


「知るかあ」


「どうして? ユタなのに? せめて、いつ起きるか分からないの? 予言できないの?」


しつこいあたしを、おばあがギロリと睨んでくる。


「知っとるのはキジムナーだけさ。わあたち人間には分からん」


「キジムナー? それって神様?」


おばあがふるふると首を振りながら教えてくれた。


キムジナーは、年数を経た木に住んでいると言われる妖怪……らしい。


「よっ……妖怪?」


「そうさ。キジムナーはカン様(神様)ぬ使いぬもんよ」


災いを起こすも起こさないも、キジムナーの心ひとつ。


どんな災いなのかも、そして、その時期も。


「そんなあ……」


あたしは背中を丸めた。