恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「だからさ……今はこんなことしかできないけどさ」


あたしの額に、海斗が額がそっとくっつけた。


触れた部分から優しいものが、体に流れ込んでくるような気がした。


海斗は、本当に不思議な男の子。


空気みたいで、水みたいで。


きれいで。


「陽妃が、くくるから笑える日いが、かんなじ来るよー。だからさあ」


「うん……」


「ちばりよー、陽妃」


「ちばりよ?」


何? と額をくっつけたままあたしが聞くと、海斗がクスクス笑った。


「頑張りなっさー。陽妃」


どうしてだろう。


どうして、海斗の言葉はすんなりあたしの心に入ってきて、ストンと落ちていくんだろう。


同じ島の方言でも、海斗が口にすると、違う気がするのはどうしてだろう。


ただ額を重ねて話しているだけなのに、心が安らいでいくのはどうしてだろう。


「何もしてやれないけどさあ。おれ、そばにおることはできるよ」


やっぱり、海斗は波みたいだ。


クリアブルー色の、穏やかに凪いだ波。


海斗のひと言ひと言が、あたしの心の氷をひとつずつ溶かして行った。


「陽妃」


額を離して、海斗が顔を覗き込んでくる。


真っ直ぐな瞳で。


「かんなじ来るよー」


「え?」


「今は辛くても、この後に待っているのは幸せさ。おれは……そうだったよ」


その瞬間、あたしは胸騒ぎに似た感覚を覚えた。


一瞬だけ、海斗が寂しい目をしたから。


「……海斗?」