恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

中学生の海斗の腕の中は狭かったけど、温かかった。


海斗に抱きかかえられて行くと、居間でおばあちゃんが待っていた。


「海斗」


「いー」


「そこに薬があるから、手当てしてやれぇ」


と低い茶箪笥を指差して、おばあちゃんは奥の台所へ入って行った。


「いー」


返事をして、海斗はあたしを畳の上にそっと下ろした。


そして、無言のまま茶箪笥の上から木箱を取り、あたしの前にどしっと座った。


「手ぇ」


「……うん」


しゃくりあげながら手のひらを見せると、海斗はため息を落とした。


消毒液を吹きかけて、ガーゼで拭き取る。


軟膏をすり込んで、絆創膏を貼ってくれた。


無言のまま、一度も目を合わせようともせず、ただ、寡黙に。


傷の手当てが終わった頃、不思議にも、あたしは落ちつきを取り戻し始めていた。


でも、心にひとつだけ引っかかってもやもやしていた。


木箱を元の位置に戻す海斗の背中に、あたしは声をかけた。


「ごめんね、海斗」


さっきから、ずっとこの調子だ。


「……」


海斗は背を向けたまま、茶箪笥の前に突っ立っていた。


重っくるしい空気に包まれる。


海斗の態度が、やけに引っかかる。


「あからさま。引いたんでしょ、あたしのこと。バカだなって、最低だなって。思った?」


だから、そんな態度をとるんだ。


だから、目も合わせてくれないんだ。


けれど、海斗は背を向けたまま何も答えてくれない。