恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「でも……どうしよう」


「泣くなぁー」


あんなこと、しなければよかった。


こんなふうに後悔するなら、しなければよかった。


ガジュマルの木に触れなければ良かった。


しゃくりあげながら泣くあたしの肩をトントン叩いた後、おばあちゃんがすうっと立ち上がった。


あたしの頭上で交わされる会話。


「海斗」


「……いー(はい)」


ハッとして顔を上げると、困った顔の海斗が突っ立っていた。


海斗……ずっと、そこに居たの?


全部、聞かれちゃったかな。


やだな。


引かれた……だろうな。


後ろめたくて、あたしはしゃくりあげながら背中を丸めた。


おばあちゃんが不機嫌な声で言った。


「くぬ、さんさなー(おてんば)を、かなめー(居間)に連れて来い」


のし、のし、おばあちゃんの足音が遠ざかって行った。


「いー」


海斗の声がしたと思うと、その時はもう、あたしの体は宙に浮いていた。


あたしとほとんど変わらない、背丈。


それに、中学3年生。


あたしより、ふたつも年下なのに。


あたしの膝裏と腰に腕を引っ掛けて、海斗は一気に高2の女を持ち上げてしまったのだ。


でも、あたしは涙が止まらなくて、泣き疲れていて、抵抗する気力さえなかった。


しゃくりあげながら、海斗の胸に顔をうずめた。


「ごめんね、海斗」


それを口にするのが、精一杯だった。


この島が大好きな海斗を裏切るようなことをして、ごめんね。


海斗は何も言わなかった。