恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

むすっとした顔のまま、おばあちゃんがこくりと頷いた。


「そうさ。くぬちゅらさん泣かして、幸せになれるもんがおるかあ」


しわしわの手がにょっと伸びてくる。


小さなしわしわの手で、おばあちゃんはあたしの頬をぐいっと拭った。


もう泣くなあ、そう言って。


「おまえぬくくるは綺麗だよー。陽妃ぃー」


あたしは目をぱちぱちさせた。


いつの間に、あたしの名前を知ったんだろう。


もう一度、目をぱちぱちさせた。


「くくるって?」


「心ぬことよ」


「あたしの、心ってこと?」


こくりと、おばあちゃんが頷く。


「そんなことない! あたしの心は真っ黒だもん」


妬みと恨みで、破裂しそうだ。


「おまえは正直もんさ」


おばあちゃんが顎であたしを指した。


「正直に言ったからさ。ガジュマルの木に、触れたことをよ」


正直もんはくくるが綺麗さー。


おばあちゃんの一言に、また、涙が溢れる。


でも、嬉しい涙じゃなかった。


嬉し涙とはまるで別の、強烈な後悔の涙。


「ごめんなさい……どうしよう。ごめんなさい!」


「泣くな、陽妃ぃー」


どうしよう。


後悔して泣いたって、あのの木に触れた事実は、何も変わらない。


いまさら謝ったところで、その事実が消えることはないのに。


「本当に災いが起きたら、どうしよう!」


「なるようにしかならん」


おばあちゃんは動じることなく、堂々と構えた。


「起きる時は起きる。起こらんときは、起こらん。人間が慌てても何も変わらんさ」