恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「あたし、捨てられたの! ゴミみたいに。大好きだった彼に、捨てらちゃった。本当に……好きだったのに」


のし、のし、足音が近づいてくる。


ギシギシ、床がきしんだ。


胸の底から込み上がるどす黒い感情を止める術は、もうなかった。


涙が、濁流になって頬を流れ落ちる。


「親友だと思ってた! でも、ひかりはっ……あたし、信じてた! ふたりのことっ」


信じてた。


でも、裏切られた。


大好きなふたりを、同時に失ってしまった。


なぜ、何のために、全く関係のない人に当たり散らしているのか、自分でも分からない。


当たり散らしたって、どうにもならないのに。


でも、止めることができなかった。


あたしは狂ったように、べらべら口を動かし続けた。


大我のこと、ひかりのこと。


「友達は早く忘れろって言うの。でも、そんなに簡単なこと?」


ふたりに子供ができたこと。


ふたりとはもう、連絡がとれなくなっていたことも。


全部、全部、吐き出した。


「……それでも信じていたあたしは、バカみたい? もう、最悪だよ!」


あたしは血が滲む手をぎゅっと握りしめた。


痛くて、表情が歪んだ。


忘れたいよ。


もう、全部……忘れてしまいたい。


「どうすれば忘れられる? 教えて! おばあちゃん、ユタなんでしょ!」


八つ当たりに過ぎないことくらい、分かっていた。


バン!


あたしはその手で、床を思いっきり叩いた。


「もう嫌! 人間なんか大っ嫌い! 人間は、人間を捨てるのよ!」