恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

まるで、助けを求めるように。


「風が強かったのに! 波が高かったのに!」


後ろに海斗がいることさえ、忘れていた。


それくらい、無我夢中で叫んでいた。


あたし、なんてことをしてしまったんだろう。


「ガジュマルの木に、触ったの!」


後ろでジャリッと後ずさりするような音がした。


その直後、水を打ったようにシーンと静まり返った空間。


おばあちゃんの家は木造平屋で、古くて、薄暗くて。


お線香の匂いがした。


ガタン。


その音に、背筋が反応した。


スーと音がして、引き戸が動く。


息を飲むあたしに、ガラガラの怒鳴り声が降ってきた。


「ハンマヨー(何てことを)!」


顔を上げると、顔だけを出して、おばあちゃんがギョッとした目であたしを見ていた。


「それだけじゃないよ! 木で殴った!」


何度も何度も、恨み辛みをぶつけるように。


これでもか、これでもか、って。


気が狂ったように。


手の皮が剥けて血が滲むくらい。


何度も殴った。


「そしたらね……ガジュマルの木、ボロボロになっちゃった」


おばあちゃんのしわくちゃ顔が、見る見るうちに強張った。


「くぬ、フリムン(馬鹿者)があっ!」


怒鳴り声と同時に、


「だって! 悔しくて惨めで! 耐えられなくて! 災いが起きて、みんな不幸になればいいと思って」


喉が張り裂けてしまいそうなほど叫んで、あたしはそこに崩れおちた。


のしのしと音を立てて、おばあちゃんが部屋から出てくる。


あたしを、睨みながら。