恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

1週間前に島へ越してきて、右も左も分からないあたしの手を引いてくれたのは、他の誰でもなくて。


海斗だったのに。


あたしは海斗の手をほどいた。


「どうしたのさ」


「あたし……とんでもないことしちゃったかもしれない」


ガジュマルの木に、触れてしまった。


木を傷だらけにしてしまった。


「おばあちゃんてユタなんだよね?」


あたしの頭からはらりと落ちたタオルを拾いながら、海斗が首を傾げる。


「それがどうかしたかね」


「……ユタならどうにかできないのかな」


「え? あっ、陽妃!」


あたしは海斗を振り切って、おばあちゃんの家の玄関に飛び込んだ。


「おばあちゃん!」


どうしよう。


大変なことをしてしまったのかもしれない。


「おばあちゃん!」


玄関の段差に手をついて2回叫んだ時だった。


奥の引き戸がスーと開いて、おばあちゃんがぬうっと顔だけを出した。


あたしの顔を確認したおばあちゃんは、


「……やまとんちゅか」


フンと鼻を鳴らして、顔を引っ込めてしまった。


「ねえっ! おばあちゃんはっ」


ユタなんでしょ?


ユタは人の未来がわかるんでしょ?


神様の声が聞こえるんだよね?


引き戸がスーと動いて、トン、と閉まった。


おばあちゃんが、島の人間じゃないあたしを良く思ってないことくらい、分かる。


でも。


「おばあちゃん! どうしよう!」


あたしは夢中で叫んでいた。