恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

その透明な眼差しが、乱れ狂ったあたしの心を浄化していった。


「陽妃の体は、涙でできているのかもしれないさ」


くははっ、と海斗が無邪気に笑った。


どうして、海斗はこんなあたしに笑いかけてくれるのだろう。


初めて浜で会ったあの日も、こうして笑いかけてくれた。


胸が締め付けられる。


あたし、何てことをしてしまったんだろう。


ガジュマルの木に触れて、傷だらけにしてしまった。


それは、この与那星島の人を含めて、この海斗を裏切ったことになるんじゃないだろうか。


あたしなんて、突然、東京から引っ越してきた訳の分からないただのよそ者に過ぎないはずなのに。


それでも、こんなあたしに真っ直ぐ向き合ってくれるのは、海斗だけだった。


そんな海斗を裏切る行為を、あたしはしてしまったんじゃないだろうか。


ハッとした。


同じだ。


結局、あたしも大我やひかりと同じだ。


この島の人たちが守っている掟を、あたしは簡単に破ってしまったんだ。


それも、あたしの勝手な事情で。


災いが起きる。


そんな迷信を信じているわけじゃないけれど。


でも、仮にもし、あたしのせいで災いが起きてしまったら。


その災いが、他の誰でもない海斗にふりかかってしまったら。


そう思った時、背中がぞっとした。


海斗の真っ直ぐな瞳を見て、あたしは自分がやってしまったことを、心底後悔した。


「海斗」


海斗だったのに。