恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

気がするって言うよりも……。


「来ないよ、きっと」


呟いたあたしに、海斗は言った。


「なんでそう思うのよ。来るさ来るさー」


「海斗は純粋だから分からないんだよ。あたしの気持ちなんて」


皮肉めいた言い方をしたあたしを、海斗はぶれることなく真っ直ぐ見てくる。


目を反らしたあたしの手を突然掴んで、海斗は言った。


「そんなら、おれが証明してみせるさ!」


「はあ?」


思わず後ずさりしてしまった。


でも、海斗はあたしの手を離そうとしない。


「陽妃が本当に笑える日いが来るまで、おれがいつもそばにいるさあ」


何言ってんの、海斗。


ばかだよ。


そんなの嘘に決まってる。


いつもそばにいることなんて、できないくせに。


「中学生のくせに、生意気言わないでよ」


あたしは笑い飛ばした。


年下のくせに。


何抜けたセリフ吐いてんのよ。


あたしのことなんて、何も知らないくせに。


「離して!」


あたしは乱暴に海斗の手を振りほどいた。


でも、本当に何も知らなかったのは、あたしの方だったのに。


海斗が悲しい目をして、あたしを見つめてくる。


それが悔しくて、あたしは暴言を吐いた。


「いつもそばにいるって言うけど、そんなの嘘じゃん! 人は人を裏切る最っ低な生き物なんだから! 海斗みたいな子供にはまだ分かんないだろうけど!」