「はあ……」


潮風にあおられながら、たった今届いたばかりのメールを開いた。


「出たー」


差出人を確認して、額を押える。


裏切り者、1号。


仲良しグループの中でも、特にいちばん仲が良かった。


渋谷 ひかり。


彼女とは小学校からの仲で、親友だと思っていた。






From ひかり
2012 07/25 15:40
Sub 陽妃 へ
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もう沖縄に着いた?

陽妃がいないとせっかくの夏休みもつまんないよ。

お金貯めてみんなで遊びに行くね!

うちら、離れてても親友だよ!







「つか、来なくていいよ」


最後の2行を読んで、あたしは溜息さえ失ってしまった。






大我(たいが)が浮気しないように、あたしが見張っておくから。
心配しないでね。





「あんたが言うなよ」


人間とは、どこまで残酷になれる生き物なんだろう。


ひかりのバカ。


嘘つき。


あたしが居なくなってせいせいしてるくせに。


「何なの、まじで」


潮風が沁みて、痛い。


涙目になる。


「あたし、全部知ってんだから」


ひかりのアホ。


アホ……。


「陽妃? うつむいてどうした、疲れた?」


メールを睨みながら涙ぐんでいると、右隣にお父さんが座った。


「ううん、別に」


「そうか。あ、ほら、見えて来た。あれが与那星島だよ」


とお父さんが前方を指さした。


「あ……」


小さくて深緑色の島が、遠目にぽつんと浮かんでいるのが見える。


あの島、なんだか……あたしみたい。


ひとりぽっちで可哀想。


「見えて来たわね」


今度は左隣にお母さんが座った。