恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

なんで、海斗と目が合うと、あたしは金縛りに合ったように体が硬直してしまうんだろう。


それで、吸い込まれそうになってしまう。


少し、怖くなった。


「陽妃は、とても悲しい目えをしているねー」


そう言って、海斗はあたしの目尻にそっと触れた。


「でも、きれーな目さあ。陽妃はきれーな目をしているさ」


触れられている部分だけが、日に灼けたように熱くなった。


「だから……おれは」


海斗の手は相変わらずひんやりして、冷たいのに。


「おれは……」


何かを言いかけて、海斗はハッとした様子で手を離した。


そして、ぷいっとあたしに背を向けた。


「えっ、何? 今何か言おうとしたよね?」


「なっ、何でもないー」


海斗の声は少しだけ上擦っていた。


しばらくして、海斗が言った。


「陽妃に何があったんかはわからん。でもさあ」


と凪いだ海を眩しそうに見つめながら。


「今は涙そうそうでも、いつか必ず、笑える日が来るからさあー」


あたしは肩をすくめた。


いつか必ず、笑える日がくるなんて思えなかった。


そんな自信、あたしにはなかった。


「そうかな……そんな日、来るのかな」


「当たり前さ! 来るさあ」


「来ない気がする」