恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

海のずっと先を見つめると、さっきよりも夕日が落ちて低い位置にあった。


水平線が朱く輝き、空の袂まで朱色に染まっていた。


「不思議な色」


浅瀬の海水は底までハッキリ見えて透明なのに、遠ざかるに連れて青色が濃くなって見える。


「これ、何ていう色なのかな」


あたしは足元の水を両手ですくって、海斗を見つめた。


「透明だけど青くて。青いのに、透明。なんていう色なのかなあ」


海斗がぽつりと呟いた。


「クリアブルー」


透明な青……。


海斗の横顔がやけに眩しくて、あたしはとっさに目を反らした。


しばらく沈黙が続いて、次第に夕日が落ちて、海に溶けていった。


与那星浜に一段と静けさが増す。


浜を囲むように生い茂る木の葉が、やさしげに揺れていた。


寄せては返る波の音だけが響く中、また、海斗が鼻歌を奏でた。


あ……涙そうそう。


「ねえ、海斗」


あたしが話し掛けると、海斗はにっこり笑った。


「何か?」


「あの、涙そうそうの、そうそうって、どんな意味があるの?」


「涙が、ぽろぽろこぼれ落ちるってことよね」


そうなんだ。


「陽妃みたいさあ」


そう言った海斗の声は低くて、でも、とても静かなやさしい声だった。


「昨日の陽妃みたいさ。そうそう」


海斗の瞳は限りなく澄み切っていて、猛烈にきれいだった。