恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

それを口にしたら、もう歯止めがきかなくなるって確信したから。


もう、彼氏でもないし、親友でもないのに。


ばかみたい。


立ち止まった海斗を追い越して、あたしは早足で先を急いだ。


海斗は何も聞いてこなかった。


ただひたすら、涙そうそうを鼻歌で奏でながら、静かにあたしの後ろを付いて来た。


浜に着くと、まるで両手をいっぱいに広げるように、海の大パノラマがあたしたちを待っていた。


「わあ……きれい」


夕日が沈み始めた海は、不思議な色をしていた。


「ねえ、海斗」


振り向くと、海斗は小さく微笑みながらこくりと頷いた。


「昨日とはぜんぜん違うね。今日は波が静かだね」


風も穏やかで、やわらかく吹いていた。


「波打ち際まで行ってみるかね?」


海斗にいわれて、うん、と頷いた。


「たまらなく綺麗さ。こん時間の水は」


波打ち際の水は、海斗が言ったようにたまらなく綺麗だった。


「すごい。本当に綺麗」


足元に限りなく透明な水が打ち付ける。


あたしが付けたばかりの足跡を寄せる波がすくって、返る波が連れ去った。


足元の海水を、そっと両手ですくってみる。


「すごい……何でこんなに透明なの?」


海水がクスクス笑った。


「わからん」


「島の人間なのに分からないの?」


あたしの攻撃を、海斗はあっさりと笑い飛ばした。


「わからんもんは、わーかーらーん!」