恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

キッチンでお父さんとお母さんが笑っていた。


「聞いたよー。ひとりで全部食べたんだってね。びっくりさ!」


恥ずかしい。


一気に、茹だるように頬が熱くなった。


「お父さん! お母さん!」


ふたりが海斗にしゃべったんだ。


睨むとふたりは「あっ」なんてわざとらしくあたしに背を向けた。


「もう。おしゃべりなんだから」


あたしがいじけていると、海斗がこれから浜に散歩しに行こう、と言い出した。


「えっ、これから?」


「何か用事でもあるのかね?」


「無いけど、もう6時過ぎてるよ?」


夜になっちゃうのに。


「だから、誘いに来たのさー」


もうじき夕日が沈む頃の与那星浜は、日本とは思えないほどきれいなのだと、海斗が教えてくれた。


「そういえば、夕日が沈む頃の浜、見たことないかも」


「でしょう!」


と海斗が目を輝かせた。


「海が一番綺麗に輝くとこを、陽妃に見せたいからさあ」


海斗の目は人の心を動かす不思議な力があるのかもしれない。


なんて、思った。


「……せっかくだから、行こうかな」


なぜなのか、分からない。


断る事は簡単にできたはずなのに。


でも、あたしは海斗と浜へ行くことにした。


この島のこの集落は、まるで人が寄り添い合うように、家々が密集している。