恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

初めてかもしれないなあ、なんて思う。


こうして、誰かに真っ直ぐ謝られたりするのは。


「昨日はごめん。陽妃」


必死に謝る海斗を見ていたら、要らない力が一気に抜けていった。


「やだなあ、海斗のせいじゃないよ」


なんだか可笑しくて、あたしは笑ってしまった。


「海斗は何にも悪くないよ。昨日は疲れてて、日に灼けて体調崩しただけだから。だから、気にしないで」


海斗は肩をすくめたまま、あたしを見つめた。


「本当かね?」


「うん。だから、謝らないで。昨日は、海斗のおかげで楽しかったし」


海斗の顔に赤みがさして、ぱあっと笑顔になった。


「良かったー」


海斗は手にしていた箱をあたしに差し出して、昨日のおわびさ、と言った。


受け取ると、箱が温かかった。


「これ何?」


パコッと蓋を開けてみると、不思議なものがごろごろ入っていた。


立ち上ってくる熱い蒸気と、香ばしくてさりげなく甘い香り。


「これはよう、裏のおばあ特製のサーターアンダギーさ」


「サーターアンダギー?」


「そうさ。うまいったらうまいさあ。おばあのサーターアンダギーは、どこの店よりもうまいのよ」


「へえー」


小麦粉と、たっぷりのお砂糖。


ベーキングパウダー、卵、バターに塩。


それらを混ぜた物を油で揚げた、沖縄のドーナツ……みたいな食べ物ならしい。


「ひとつ、食べてみなっさあー」


一口ほおばってみると、びっくりするほど美味しかった。


「やばーいっ」


外はサックサクで、中はしっとりしていて。


ドーナツよりも、あたしは好きだと思った。