恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「……あい」


はじめ、里菜は頷いてくれなかった。


「お願い」


「……何言うんかぁ。正気か。信じられねーらん。ふらーかぁ」


「冗談でわざわざ呼び出したりしないよ」


「やしが、わんにやできん」


「どうして?」


できん、どうして、できねーらん、なんで。


押し問答の末、根負けした里菜が頷いてくれるまで結局1時間近くかかってしまった。


「……わんにや責任とれねーらんしさ」


「大袈裟だよ」


でも、どんなに時間がかかってもあたしは引き下がらなかった。


どうしても、里菜にお願いしたかったのだ。


里菜がいいと思ったし、他の人は考えなかった。


「……後で文句言うのやナシだからね。いいね、陽妃」


「言わないよ」


小さい頃からなんとなく伸ばし続けて、気付いたら腰まで長くなっていた髪の毛。


切ると言っても毛先を整えるくらいで。


一度だって短くしたことはなかった。


特にこれといった理由もなく、18年間伸ばし続けてきたあたしの髪の毛に触れた里菜は「もったうらん(もったいない)」、そう言って躊躇した。


「……何でね。なんで急に」


ハサミを握り締めて躊躇う里菜を、あたしはわざと挑発した。


「美容師になるんじゃないの? いつかこの島に店を出すっていうのはただの理想? 自信ないんだ」


そうでもしないと、里菜が泣いてしまいそうだったから。


「練習だと思って、ね、里菜」


「……後悔しても知らんよ……切るよ」


やめるなら今さ、と里菜がごくっと唾を飲み込み、あたしの耳元でハサミをシャキンと鳴らした。


「結べないくらい短くして」


「そんなに短くするぬ?」


「うん。中途半端に長いと邪魔だから」